「鎌倉散歩」 (その43)   得田 皓則   


十三佛霊場巡拝

 十三佛を参拝すれば、亡き人の追善になり、また、追善を行ったという善行の功徳により、自分が死んだ後に、十三王の審判から救済され、後生は善処に生じる(来世に生まれる善い場所、即ち、極楽、浄土に行かれる)と信じられ、十三佛信仰が室町時代から盛んになり、現在でも日本各地に十三佛霊場が有り、多くの人が巡拝しています。

 先祖の追善を十分してこなかった、また自分の行いを省みて、思うところのある貴男!そして貴女!過去から現在までの罪障消滅と未来は善処に生まれるように、また、冥土に旅立った両親・家族・親類縁者の追善のために鎌倉十三佛霊場巡拝に出てみませんか。 

○十三佛信仰 もともとは中国において仏教の教理をもとに、いろんな民間信仰を取り入れて成立した十王思想が、室町時代に日本でアレンジされ、十三佛思想として成立したものと言われます。十王思想の内容は、亡き人は初七日から三回忌に至る十回の忌日にそれぞれの十王(十王とは、亡者が冥界において出会う十人の王様のこと)の前において、生前なした善悪の業を余すことなく審判されて、悪行あれば苦しみを受けた後に、次ぎに生じる世界が決定されるというものです。次の世界とは仏教で説いている六道輪廻で地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上のいずれかです。

○審判の例

初七日・秦広王(王は仏の化身と言われ、秦広王は不動明王の化身) 生前なした善悪の業をすべて調べられ、また死天の山門に集まった鬼神たちに鉄杖をもって身体を打たれながら殺生の類の罪を調べられる。

五七日閻魔王(地蔵菩薩)

有名な閻魔様ですが、浄頗梨の鏡を用いて、亡者の善悪の業を余すところなく映し出して記録する。

というように十王の審判があり、日本で追加された七回忌以降の三つの忌日では王が亡き人を断罪することはなく、仏が直接亡き人を教化し、引導すると述べられています。十三佛は現在でも各年忌の本尊として、生活の中に浸透し信仰されています。

【一番札所

 明王院(みょうおういん)(真言宗御室派) 不動明王(ふどうみょうおう) (しん)(こう)(おう) 初七日忌(しょなぬか)

 鎌倉幕府第4代将軍藤原頼経が、幕府の東の鬼門の方角に当たるこの地に将軍の御願所として1235年に創建した。高い寺格を有した。本堂には不動明王など五体の明王が祀られている。鎌倉時代から祈願寺として重んじられ、元寇の際には異国降伏祈願が行われた。櫻やツツジの名所でもある。

【二番札所

   浄妙寺(臨済宗建長寺派) 釈迦(しゃか)如来(にょらい) 初江(しょこう)(おう) 二七日忌(ふたなぬか)

 鎌倉五山第五位。「鎌倉五山」鎌倉五山巡り参照。

【三番札所】

 本覚寺(日蓮宗) 文殊菩薩(もんじゅぼさつ) (そう)帝王(ていおう) 三七日忌(みなぬか)

 日蓮の分骨をして東身延と称する。「本覚寺・妙本寺」参照。

【四番札所

 寿福寺(臨済宗建長寺派) 普賢菩薩(ふげんぼさつ) 五官(ごかん)(おう) 四七日忌(よなぬか)

 鎌倉五山第三位。「鎌倉五山」鎌倉五山巡り参照。

【五番札所

 円応寺(臨済宗建長寺派) 地蔵(じぞう)菩薩(ぼさつ) 閻魔(えんま)(おう) 五七日忌(いつなぬか)

 円応寺はもと由比ヶ浜にあった荒井閻魔堂と呼ばれるお堂で、江戸中期に現在の場所に移された。本堂には仏師運慶作と伝えられる閻魔大王像(国重要文化財)が正面に据えられ、十王像が並ぶ。ここに並ぶ十王像と解説を見ると、それぞれの十王がどういう審判をするのかが示されています。建長寺を少し下がったところにある。

【六番札所

  浄智寺(臨済宗円覚寺派) 弥勒菩薩(みろくぼさつ) 変成(へんじょう)(おう) 六七日忌(むかぬか)

鎌倉五山第四位。「鎌倉五山」鎌倉五山巡り参照。

【七番札所

  海蔵寺(臨済宗建長寺派) 薬師(やくし)如来(にょらい) (たい)山王(さんおう) 七七日(満中陰)

建長5年(1253年)鎌倉幕府六代将軍宗尊親王の明により藤原仲能がここに七堂伽藍を再建したが、元弘3年(1333年)の鎌倉幕府滅亡の時に焼失。その後、応永元年(1394年)鎌倉公方足利氏満の命により、心昭空外を開山に招いて再建した。山門の脇には鎌倉十井の一つ、底脱の井があり、また薬師堂の裏には同じく鎌倉十井の一つ十六の井(16個の穴に湧水をたたえた井戸)があり、水の寺と言われる。四季折々に花が咲き落ち着いた綺麗な寺である。

【八番札所】

 報国寺(臨済宗建長寺派) 観世音(かんぜおん)菩薩(ぼさつ) 平等(びょうどう)(おう) 百ヵ日

 竹寺として有名。


創建は建武元年(1334年)、開山は佛乗禅師を迎え、足利尊氏の祖父家時が建立したと伝えられる。山門から本堂までは石庭を配した禅寺特有の凛とした風情が感じられる。当寺は関東足利公方終焉の地である。本堂裏手の孟宗竹の竹林が有名で、「竹の寺」と称される。

近くには「旧華頂宮邸」があるので寄って見られると良いでしょう。
旧華頂宮邸」 鎌倉の緑深き谷戸の中に、古典的なハーフティンバースタイルの赴きある洋風建築があります。

この建物は、旧華頂宮邸といわれ、昭和4年の春に華頂博信侯爵邸として建てられたものです。平成85月鎌倉市が取得し、平成184月には市の景観重要建築物、同年10月に国の登録有形文化財(建造物)に指定されました。日本歴史庭園100選に選ばれています。

【九番札所

 浄光明寺(真言宗泉涌寺派) 勢至菩薩(せいしぼさつ) 都市(ずし)(おう) 一周忌

 阿仏尼の子の冷泉為相の墓がある。「浄光明寺」浄光明寺参照。

【十番札所

 来迎寺(時宗) 阿弥陀(あみだ)如来(にょらい) 五道転(ごどうてん)(りん)(おう) 三周忌

 一向上人が鎌倉時代中期に建てたと伝えられている寺で、西御門の閑静な住宅街にひっそりと建っている。細かいところにも手入れが行き届いた気持ちの良いお寺です。平成になって改築された本堂には穏和な笑みを浮かべた如意輪観音が安置されている。その表情や複雑な衣紋に南北朝の特色が見られる。時宗のお寺はそれぞれそれほど大きくないが鎌倉中心部に意外に沢山あります。

【十一番札所】

 覚(かく)(おん)(真言宗泉涌寺派) 阿しゅく如来 蓮上(れんじょう)(おう) 七回忌

 建保6年(1218年)北条義時が夢のお告げにより建立した大蔵薬師堂をもとに、その後、永仁4年(1296年)北条貞時が覚園寺として再建した。鎌倉宮の先の奥まった所にある、落ち着いたお寺。阿しゅく如来以外でも本尊、薬師三尊、十二神将、黒地蔵尊、愛染明王など多彩な仏像を祀っている。決められた時間に境内を案内してくれる。終戦後、各寺社の経営が苦しい時にも、時の住職が寺の資産を散逸させずに守ったと言われる。

【十二番札所

  極楽寺(真言律宗) 大日如来(だいにちにょらい) (ばっ)(く)(おう) 十三回忌

 鎌倉時代、慈善事業を数多く行い、人々の尊敬を集めていた「忍性」と執権北条義時の子・重時が協力して正元元年(1259年)に創建したといわれる。重時は完成を待たずにこの世を去ったが、子供の長時、業時が金堂、講堂、塔などの伽藍、49支院をもつ大寺院を完成させた。その後も鎌倉有数の大寺として隆盛を保ってきたが、度重なる自然災害と火事のため、現在では当時の広い境内の大部分は住宅地に変わり、本堂となっている吉祥院のみが残る。国の重要文化財である忍性の五輪塔や清涼寺式釈迦如来像(秘仏)など寺宝は数多い。

 江ノ電極楽寺駅に隣接しており、見物に便利であり、この後、坂を下っていき、成就院、長谷寺、大仏と一連の観光コースになる。

【十三番札所

 虚空蔵堂(こくうぞうどう)(真言宗大覚寺派) 虚空蔵(こくうぞう)菩薩(ぼさつ)(じ)(おん)(おう) 三十三回忌

 正しくは明鏡山星井寺。本尊は知恵と福を与え、全ての人々の願いを叶えると言われる虚空菩薩。奈良時代、行基がこの地で虚空菩薩像を彫って祀ったと伝えられる。鎌倉時代には源頼朝が秘仏として35年に一度だけの公開を許した。星の井と呼ばれる井戸があり、行基がこの井戸から虚空蔵の化身である石を拾ったとも伝わる。慶長5年(1600年)京都から江戸に向かう徳川家康もこの井戸の中を見るために立ち寄ったとされる。

現在は成就院の一部となっている。「成就院」参照。


○13佛霊場巡拝ルート

この13佛霊場を巡拝するには、鎌倉市の旧市内をほぼ一巡することになりますので、一日でまわるのはかなり難しいと思いますが、御朱印帳に朱印を貰ってまわる事を中心にと言うことなら可能かも知れません。お寺を見物しながらまわるとなると二日必要でしょう。

私の推薦の見学コースです。

一日コース

鎌倉駅東口バス232415分「泉水橋」下車すぐ「明王院」―徒歩15分「浄妙寺」―徒歩5分「報国寺」―徒歩20分「覚園寺」―徒歩25分「来迎寺」―徒歩15分「円応寺」―徒歩10分「浄智寺」―徒歩20分「浄光明寺」―徒歩10分「海蔵寺」―徒歩15分「寿福寺」―徒歩15分「本覚寺」―徒歩5分江ノ電「鎌倉駅」―江ノ電12分江ノ電「極楽寺駅」―徒歩3分「極楽寺」―徒歩5分「虚空蔵堂」―徒歩10分江ノ電「長谷駅」

二日コース

一日目 鎌倉駅東口バス232415分「泉水橋」下車すぐ「明王院」―徒歩15分「浄妙寺」―徒歩5分「報国寺」―徒歩20分「覚園寺」―徒歩20分「来迎寺」―徒歩25分「本覚寺」―鎌倉駅

二日目 北鎌倉駅徒歩7分「浄智寺」―徒歩10分「円応寺」―徒歩20分「浄光明寺」―徒歩10分「海蔵寺」―徒歩15分「寿福寺」―徒歩10分江ノ電「鎌倉駅」―江ノ電12分江ノ電「極楽寺駅」―徒歩3分「極楽寺」―徒歩5分「虚空蔵堂」―徒歩10分江ノ電「長谷駅」

(了)